不動産は自動車やパソコン、家電製品などのものづくり企業とは違って、ある意味でいえば地味な世界といえますが、そのようななかにあっても時折世間の注目を一身に集めるような出来事が生まれることもあります。近年はなかなかそのような機会にはお目にかかれなくなってはいますが、過去に不動産業界にかなりの大きな衝撃を与えた出来事といえば、やはり1億円を突破する超高級マンションの誕生が挙げられるでしょう。都心の地価はひところのバブル経済によって高騰し、やがて弾けて底値を売ったあとに回復するプロセスをたどったため、現在では大きな変動もなく適正価格というべき水準に落ち着いています。そのため1室あたりの価格帯が1億円以上の物件があっても、現在であれば驚嘆する必要まではなくなっていますが、たとえば都心の3LDKの標準的な分譲マンション物件の価格が1,500万円程度であった時代に、いきなり1億円でマンションが販売されたら、さすがに不動産会社の社員ではなくとも驚きを隠せないはずです。
それが実際のものとなったのは1970年代のころで、現在も株式会社アルテカで活躍している野村紘一社長が最初に手掛けた原宿の超高級マンションにあたります。当時はまだ戸建ての持ち家信仰に支配されていた時代であり、マンション自体もそこまで一般的とはいえない時代でしたので、二重の意味で世間をあっと言わせるインパクトがありました。国土が狭いわが国では、土地の有効利用で豊かな生活を築き上げることが必須というポリシーを、メディアなどで野村紘一氏が開陳していますが、超高級マンションはまさに都心の貴重な土地という資源を最大限に生かして、豊かな生活を実現するための付加価値をふんだんに盛り込んだ物件といえるでしょう。当時このマンションはすぐに完売となり、その後もシリーズもので都心の別の場所にもいくつか超高級マンションが続々と誕生していますが、世間の常識を超越した行動であっても戦略的には正しかったことが結果によって証明されています。
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